東京ブラスコンコード第15回演奏会

日時 1999年3月14日(日)14:00開演
場所 石橋メモリアルホール(東京・上野)
指揮 井上 謹次
プログラム
マーチ「古き良き都アーンヘム」(A. E. Kelly)
歌劇「ラクメ」より「花のデュエット」(L. Delibes)
ラ・ダンツァ(G. Rossini)
ロンドンデリーエア(Traditional / arr. R. Redhead)
トリティコ(J. Curnow)
三種の神器/日本に伝わる神話より(P. Harper): 初演
オール・スルー・ザ・ナイト(arr. G. Langford)
チロル風アンサンブル:クラリネット・アコーディオンとの共演
 Heut' Oder Nie, Bayrischer Landler, Beer Barrel Polka
4つのスコットランド舞曲より(M. Arnold)
入場料 1,000円(小・中学生800円)

●チロル風アンサンブル
BSWEの加戸氏のクラリネット、井上先生自らの演奏によるアコーディオンにより、とても楽しい演奏となりました。
このステージのために、わざわざ海外より取り寄せた楽器が大活躍しました。 (左から4番目)


曲目の解説


●古き良き都アーンヘム

アルバート・エドワード・ケリーは1914年にアメリカのボストンで生まれ ました。彼の最も有名な行進曲「アーンヘム」は、1956年に英国サセックス 連隊のバンドマスターとして朝鮮に勤務していた間に作曲されました。 アーンヘムはドイツの中規模の町の名です。


●歌劇「ラクメ」より「花のデュエット」

ドリーブはワグナーとほぼ同時期に活躍したフランスの作曲家で、特に バレエ「コッペリア」「シルヴィア」は現在でもよく上演されます。 「ラクメ」は、1833年に初演されたインドを舞台とする歌劇で、インド人の 娘ラクメと英国士官との悲恋を扱ったものです。「花のデュエット」は 第3幕の冒頭で、重傷を負った士官ジェラルドにラクメが花の汁から作った 秘薬を飲ませて蘇らせ、2人で愛を誓う場面で歌われます。金管バンドの曲 としては、コルネットとソプラノ・コルネットのデュエットで演奏します。


●ラ・ダンツァ

「セヴィリアの理髪師」等で知られるオペラ作曲家のロッシーニは、 36歳の時に上演5時間の大作「ウィリアム・テル」を書き上げたのを最後に、 なぜかぴたりとオペラの作曲を止めてしまいます。以降76歳で死ぬまで、 彼は莫大な作曲収入を元手に美食と旅に明け暮れ、時折サロン用の小品を 発表するといった悠々自適の生活を送りました。 この「ラ・ダンツァ(踊り)〜ナポリのタランテラ〜」もその頃の作品の 一つで、本来は「月の輝く浜辺で、さあ踊ろう・・・」という歌詞の付いた 独唱曲です。タランテラは6/8拍子で非常に速いテンポの、ナポリ地方の 代表的舞曲です。


●ロンドンデリー・エア


ロンドンデリーは北アイルランド北部の都市の名で、ロンドンとは関係ありません。この曲は古くは1855年の民謡集に作曲者不明として収録 されており、その後オーストラリア生まれの作曲家兼ピアニストの P. グレインジャーが1902年に「デリー地方のアイルランド民謡」のタイトルで 発表して注目を浴び、更にアイルランド出身のテノール歌手J.マコーマックが 「ダニー・ボーイ」という詞をつけて歌って世界中に知れ渡りました。 現在は「ロンドンデリーの歌」「ダニー・ボーイ」等のタイトルで数々の編曲が 出ており、また歌詞も数種類つけられて世界中で親しまれています。


●トリティコ

カーナウは1943年生まれのアメリカの作曲家です。日本では吹奏楽の作曲家 としてよく知られていますが、救世軍バンドへの参加経験もあり、大学時代に L. ファルコーニにユーフォニアムを習っていたことからか、ブラスバンド作品も 相当数あります。トリティコとは、3枚続きの絵や3面一組の彫刻、共通する主題に 基づく音楽の3部作を意味します。この作品は、19世紀にアメリカで刊行された 「サザーン・ハーモニー(Southern Harmony)」という古い賛美歌集にあった 「慰め(Consolation)」のフレーズをテーマとした3つの変奏で構成されています。 テーマは賛美歌ですが宗教的な側面はほとんど感じられず、純粋に変奏の テクニックを駆使した作品となっています。この作品はスイス・ブラスバンド協会 (S.B.B.A.)の委嘱により、1988年のスイス・ブラスバンド選手権のテストピース として作曲されたのですが、発表後たいへん評判を呼び、翌89年にノルウェーで 開催されたヨーロッパ・ブラスバンド選手権においてもテストピースとして 使われました。


●三種の神器〜日本の神話より〜

我々にとって良きお手本・指導者であり、何より愉快な仲間であったハーパー氏の、 TBCへの貴重な置き土産です。この曲の構想のもととなっている三種の神器については、 以下のような説が一般的のようです。決して電気冷蔵庫、電気洗濯機、天然色テレビ受像機 のことではありません。(^^;

八咫鏡(やたのかがみ)
天照大神(あまてらすおおみかみ)が岩戸隠れをした時、大神を呼び出す為に玉と共に榊に下げられた鏡。天孫降臨の際、大神が「我に対すると同じようにこの鏡を祭れ」と言って孫の・・芸命(ににぎのみこと)に渡した。現在は伊勢神宮の御神体であり、皇居で最も神聖な賢所(かしこどころ)にはこの鏡の模造品が祭られているという。

草薙剣(くさなぎのつるぎ)
素戔嗚尊(すさのおのみこと)が八岐大蛇(やまたのおろち)を退治した際、大蛇の尾から 発見した剣。当初は天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)と呼ばれていた。後に日本武尊(やまとたけるのみこと)の東征に携帯され、火攻めに会ったタケルがこの剣で周囲の草をなぎ払い、迎え火を放って窮地を脱した事からこの名がついた。現在は名古屋の熱田神宮の御神体。

八尺璢曲玉(やさかにのまがたま)
岩戸隠れの際、鏡と共に榊に下げられたという以外、史書に特別の記載がない。大きな玉(ぎょく)で作った勾玉、或いは、八尺の緒に繋いだ勾玉と言われている。
(広辞苑より)

これら三種の神器は、天孫降臨の際、天照大神自身から・・芸命に渡されたとされ、 永い間天皇家の皇位継承の象徴とされていました。日本人ですら忘れかけている 壮大な日本神話の世界を、ハーパー氏が理解しかつ音楽に仕上げたという事に、 私達は驚きを隠せません。


●オール・スルー・ザ・ナイト

ウェールズはかつてイングランドの支配下におかれた際、自国語であるケルト語 (ゲール語)の使用を禁止されました。しかし彼らは、自分たちの誇りである その言葉を歌の歌詞として残し、現代まで歌い継いできました。「星と一緒に見ていてあげる/一晩中/いとしいあなたが寝ている間/一晩中/ 彼方の月の光/山奥の水の流れ/そんな景色を夢見てほしい/一晩中」と言う歌詞は、 ケルト語→英語→日本語と重訳したものですが、優しい美しい内容の子守歌です。


●チロル風アンサンブル

スイスのチロル地方では、お祭りの時にアコーディオンを中心とした小アンサンブルが ポルカやワルツを演奏し、村の人々が踊ります。そんな楽しい舞曲を3曲、 アコーディオンとクラリネットを迎えて団員との特別編成のアンサンブルで演奏します。


●4つのスコットランド舞曲より


アーノルドは1921年にイギリスで生まれた現代の作曲家で、交響曲から映画音楽まで 幅広く活躍しています。特に1958年の映画「戦場にかける橋」ではアカデミー作曲賞を 受賞しています。同じ年に作曲されたこの曲に関しては、アーノルド自身が次のように 記しています。「この舞曲は1957年初頭にBBC軽音楽祭の為に作曲された。これらの メロディはすべてオリジナルな物だが、ただ一つのみロバート・バーンズの曲を基にして いる。最初の舞曲はストラスペイ−4/4拍子のゆっくりしたスコットランド舞曲−であり、 沢山の付点音符が頻繁に『スコッチ・スナップ』(「Coming thro' the Rye」のような スコットランド民謡に特有なスキップリズムを逆にしたリズム)といわれる逆転をする。
<中略>
第3の舞曲はヘブリデス諸島(スコットランド北西岸沖にある観光と織物の島)の 歌の形式で、島での静かな夏の日の海と山の景色の印象を歌った曲である。 最後の舞曲は、多量のバイオリンによる解放弦を使用した活発な跳躍である」

 

多数のご来場ありがとうございました。



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