●フォーク・フェスティヴァル(「ジャズ組曲第2番」より)
ドミトリー・ショスタコーヴィチは、1906年ペテルブルグ生まれの作曲家です。
彼は「交響曲第1番 作品10」などシリアスな作品を書く一方、映画音楽や劇場音楽を好んで書くなど、
幅広い音楽的興味の持ち主でした。ことに学生時代に知ったジャズにすっかり魅了された彼は、
ジャズをただ単にカフェでの楽しみとして隅に置いておくことには我慢がならず、1934年にショウ的な
雰囲気を持ち合わせた「ジャズ組曲第1番」を、その4年後には、先の組曲と性格が異なり、
より大衆的な娯楽性を持ち合わせた「ジャズ組曲第2番」を書き上げました。
この曲は、全8曲からなる「ジャズ組曲第2番」の「ダンス第1番」をブラスバンド用に編曲されたものです。
●ゴールデン・ワルツ
「ゴールデン・ワルツ」は、ウィンターにより編曲されたワルツ・メドレーです。
カルロ・マリア・フォン・ウェーバーの「舞踏への勧誘」、ヨハン・シュトラウス2世の「喜歌劇『こうもり』序曲」・
「酒、女、歌」・「ウィーン気質(かたぎ)」・「春の声」、イオシフ・イヴァノヴィチの「ドナウ河のさざなみ」など、
有名なワルツが巧みに取り入れられた作品です。
●亜麻色の髪の乙女
フランスの最も偉大な作曲家、クロード・ドビュッシー(1862-1918)の作品です。
「月の光」と並んで有名なこの曲は、彼の後期の作品で、1909年から翌年にかけて作曲された2巻24曲からなる
ピアノ曲「前奏曲集第1番」の中の第8曲です。
「亜麻色の髪の乙女」というタイトルは、詩人ルコンド・ド・リールの「夏の明るい陽を浴びて、愛をうたう、
浜辺の桜色の唇をした美少女」という内容の詩から取られたものです。
●トリティコ
ジェイムズ・カーナウは1943年生まれのアメリカの作曲家です。日本では吹奏楽の作曲家としてよく知られていますが、
救世軍バンドへの参加経験もあり、大学時代に L. ファルコーニにユーフォニアムを習っていたことからか、
ブラスバンド作品も相当数あります。
「トリティコ」とは、3枚続きの絵や3面一組の彫刻、共通する主題に基づく音楽の3部作を意味します。
この作品は、19世紀にアメリカで刊行された「サザーン・ハーモニー (Southern Harmony)」という古い
賛美歌集にあった「慰め(Consolation)」のフレーズをテーマとした3つの変奏で構成されています。
テーマは賛美歌ですが宗教的な側面はほとんど感じられず、純粋に変奏のテクニックを駆使した作品と
なっています。
この作品はスイス・ブラスバンド協会(S.B.B.A.)の委嘱により、1988年のスイス・ブラスバンド選手権の
テストピースとして作曲されたのですが、発表後たいへん評判を呼び、翌89年にノルウェーで開催された
ヨーロッパ・ブラスバンド選手権においてもテストピースとして使われました。
●仲間との楽しいひととき
この曲はイギリス国王ヘンリー8世が作曲したものです。
ヘンリー8世は16世紀前半に在位し(チューダー朝)、立憲君主制とイギリス国教会を成立させた国王として
知られています。一方では音楽好きとしても知られ、フェアファックスやコーニッシュ等の作曲家を保護し、
当時流行中のフランスのシャンソンを奨励すると同時に、自らも作曲を手がけました。彼とその娘のエリザベス1世の
元で、イギリス音楽は史上最高の黄金時代を迎えたといわれます。
ルネサンス風の単純なリズムが、後半ロックの8ビートに変わる編曲が面白いです。
●リベルタンゴ
モダン・タンゴの代名詞的なバンドネオン奏者兼作曲家アストル・ピアソラの作品です。
1921年にアルゼンチンの避暑地マル・デル・プラタで生まれたピアソラは、ニューヨークで過ごした少年時代、
父親に買ってもらったバンドネオンに魅せられ、16歳でアルゼンチンに帰国するとタンゴ演奏家の道を歩みました。
一方、クラシック音楽への夢も捨てきれなかった彼は、33歳の時にパリのナディア・プーランジェ女史に入門します。
タンゴ音楽家であることに誇りが持てなかったようですが、女史に「あなたの進むべき道はタンゴ」という啓示を受け、
再びタンゴ音楽に取り組みました。
1974年に作曲されたこの曲は、古い因習から逸脱した自由なタンゴという意味を込めて「リベルタンゴ」と
名付けられたと言われています。現在は様々な編成にアレンジされていますが、オリジナルはピアソラと
スタジオ・ミュージシャンたちによるジャズ・ロック・アンサンブルでした。
●ヴァルドレス
1874年ノルウェー生まれのヨハネス・ハンセンが1901年から1904年にかけて作曲した、彼の最初の作品です。
「ヴァルドレス」とは、ノルウェーのオスロとベルゲンの間に位置する、約400kmに渡る山岳地帯の名称です。
この曲のイントロであるソプラノ・コルネット・ソロは、ノルウェー陸軍ヴァルドレス大隊の信号ラッパを含んだもので、
他の部分のメロディーは民謡、あるいは民謡にインスピレーションを受けたメロディーが採用されています。
牧歌風のおおらかな風情と北欧の一抹の相性とを併せ持った名曲といえるでしょう。
●序曲「ローマの謝肉祭」
1803年フランス生まれの作曲家、エクトル・ベルリオーズの作品です。
この序曲は、彼の2番目のオペラであり1838年に上演された「歌劇『ベンヴェルト・チェルーニ』」の第1幕で
描かれている「ローマの謝肉祭」の陽気なフィナーレから引用されたものです。
彼の序曲のほとんどがそうであるように、この曲も出だしのエネルギッシュな楽節が駆け抜けた後に、ゆったりとした
叙情的な部分が続き、それがさらに主部のアレグロへと至ります。1831年に実際にローマの謝肉祭をみていることから、
この曲は彼の輝かしい、はっとさせられるほど見事なオーケストレーションが最良の形でみられる曲となっています。