東京ブラスコンコード&コンクシェルバンド オープンリハーサル2001

日時 平成13年7月22日(日)/13:30開演
場所 木のアトリウム(東京・江東区東京営林局内)
指揮 井上謹次、田川伸一郎、中川寛
プログラム
[東京ブラスコンコード]
歌劇「ローエングリン」より第3幕への前奏曲(R.Wagner/arr.D.Wright)
ペル・メル(W.Hogarth Lear)
G線上のアリア(J.S.Bach/arr.H.Snell)
ラグタイム・フォー・ホルン(メイプル・リーフ・ラグ)(S.Joplin/arr.J.Curnow)
「ケルトの叫び」より
[コンクシェルバンド]
コサック(W.Rimmer)
シティークルーザー(G.Richards)
白岩のデイヴィッド(Traditional/arr.G.H.Willcocks)
ポストホルンギャロップ(G.Koenig)
シェナンドー(Traditional/arr.L.Ballantine)
コーリング・コーンウォール(G.Richards)
エルサレム(C.H.Parry/arr.G.Langford)
[合同ステージ]
ミディ(K.J.Alford)
思い出の少女(Traditional/arr.G.Langford)
ランド・オブ・マイ・ファーザーズ(Traditional/arr.G.Langford)


曲目の解説


●歌劇「ローエングリン」より「第3幕への前奏曲」

ワーグナーが、従来の歌劇から音楽と劇の一体化した「楽劇」に移行する過程で作曲した作品。ブラバンドの公女エルザの危機を救った白鳥の騎士ローエングリン、しかしエルザの愛は彼女が禁じられた問いかけをしたために悲劇で終わります。この第3幕への前奏曲は、エルザとローエングリンの結婚を祝福する音楽で、「喜びの動機」が華やかに奏でられます。歌劇では、この曲に引き続いて有名な「婚礼の合唱」が歌われます。祝祭的な雰囲気があるため、オーケストラでもよく単独で取り上げられる有名な曲です。


●ペル・メル

この曲に関しての詳しいことは判りませんでした。曲はグライムソープバンドとMELに捧げられていますが、このMELが何者か判りません。尚、作曲者のW.ホガース・レアは、エルガー・ハワーズのペンネームです(綴りがアナグラムになっています)。


●G線上のアリア

正式なタイトルは「管弦楽組曲第3番、第2曲目『アリア』」ですが、かつて名バイオリニストのアウグスト・ウィルヘルミが、バイオリンのG線(一番太い弦)だけで弾けるよう編曲し演奏したことから、この題名で呼ばれるようになりました。色々な編成の編曲が出ていますが、本日はコルネットを11パートに分けたハワード・スネルの編曲でお聴き頂きます。


●ホルンのためのラグタイム(メイプル・リーフ・ラグ)

ラグタイムは、19世紀末から20世紀初頭にかけてアメリカで流行した黒人音楽です。ケークウォークから進化したシンコペーションを多用するメロディが特徴で、このリズムが後にジャズへ発展します。この「メープル・リーフ・ラグ」は、「エンターテイナー」「イージー・ウィナーズ」で有名な“ラグタイムの王”スコット・ジョプリン(1868-1917)の出世作です。ジョプリンはかつての奴隷階級出身でしたが幼時からピアノに天分を発揮し、14歳から旅芸人として南部の酒場や宿屋で演奏活動をしていました。1899年、ミズーリ州の「メープル・リーフ・クラブ」で自作のラグタイムを演奏中、偶然通りかかった町の音楽店主ジョン・スタークの耳に止まり、「メープル・リーフ・ラグ」のタイトルで出版されたところ最初の1年間で7万5千部もの売上を記録し、ジョプリンの名を一躍有名にしました。本日は吹奏楽と金管バンドの両ジャンルで活躍する作編曲家カーナウによるホルンをフィーチャーした編曲で演奏します。


●組曲「ケルトの叫び」より「嘆き」「勝利」

この曲は、「リバーダンス」の初期公演で主演ダンサーを演じていたマイケル・フラットレーが、リバーダンスと決別し自ら創作・振付・演出を行ったダンスショー「ロード・オブ・ザ・ダンス」より、5曲を選択して金管バンド用の組曲に編曲したものです。「ロード〜」は「リバー〜」に比べでケルトの民族色を強く打ち出しており、又一貫したストーリーも持っています。「ロード〜」は1996年に初演されて以来世界中で絶賛を博し、特にラスベガスでは常設ステージが設けられ、連日上演されています。日本でも2000年に初公演が行われ話題になりました。
本日は、時間の都合により第4曲「嘆き」と第5曲「勝利」の2曲のみを演奏します。


●ザ・ミディ(海軍士官候補生)

「イギリスのマーチ王」アルフォードが脂の乗り切っていた1917年に発表した曲で、彼の代表作の一つです。『ザ・ミディ』とは王立海軍士官候補生の意味で、タイトル通り若々しいメロディと明快な構成が特徴です。尚、原曲(吹奏楽)は、トリオの部分に魅力的なピッコロの対旋律が演奏されます。


●思い出の少女

ブージー&ホークス版「イングランドの歌」という本に載っている解説を直訳します。
「この歌の歌詞は18世紀中頃に溯ることができる。1759年前後、フランスの侵略に備えて、イギリス南部の海岸に多くの野営地が置かれていた。作者不明のこの歌は時に“Brighton Camp" として知られている。この曲は今なおイギリス陸軍の出陣式典の際に演奏される」
歌詞の翻訳は難しいので、1番の歌詞をそのまま掲載して皆さんへの宿題としましょう。
I'm lonesome since I crossed the Hill, / And o'er the moor and valley,
Such heavy thoughts my heart do fill, / Since parting with my Sally.
I seek no more the fine or gay, / For each does but remind me
How swift the hours did pass away / With the girl I left behind me.


●ランド・オブ・マイ・ファーザー


我々が通常「イギリス」と呼び慣れている国の正式名称は、「大ブリテン島及び北アイルランド連合王国」といいます。大ブリテン島にはイングランド・スコットランド・ウエールズの3つの王国がありますが、この「ランド・オブ・マイ・ファーザー」は、ウェールズの正式な国歌(ウェールズは独立国ではないので、厳密には国民愛唱歌かもしれませんが)です。
ブリテン島には、紀元前からケルト人が居住していました。しかしそこにアングロ族・サクソン族が侵入し更にノルマン人が進出してイングランドを建国します。ケルト人はウェールズを建国してイングランドに対抗しますが、13世紀の終わりにエドワード1世に破れて王位を奪われ(イングランドの皇太子が“プリンス・オブ・ウェールズ”となる)、更に15世紀にはイングランドに併合されてしまいます。しかしウェールズの人々はイングランドの支配に甘んじながらも、英語と異なるウェールズ語を話し、又「アーサー王伝説」や各種の妖精物語などの伝統文化を守りつづけてきました。
ウェールズ国歌「わが父の国」は、以上のような歴史を持ったウェールズの人々の愛国心を歌い上げた曲であり、正式にはウェールズ語で歌われます。単に「美しい曲」と感じるのみならず、国歌に対する敬意をもって接しましょう。

 

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